1.76 PROJECT

1.76プロジェクト
開発ストーリー

世界一への挑戦
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開発メンバー

開発本部 部長
長尾 淳司
開発本部 主席
岡本 訓良

どんな逆風にも負けない信念と団結力が、
世界最高屈折率1.76レンズを生み出した

開発から15年以上が経ったいまでも、他社の追従を許さないメガネレンズがある。世界最高屈折率1.76のプラスチックレンズだ。その記録が他社に塗り替えられていないという事実は、屈折率を上げることがいかに困難であるかを物語っている。

東海光学が世界最高屈折率1.76レンズの開発をスタートしたのは2004年。軽くて薄いレンズを求める消費者のニーズに応えようと、世界中のメーカーが凌ぎを削って高屈折率の製品開発に力を入れていた。当時は屈折率1.74が業界の最高水準であり、それを上回ることは不可能に近いと思われていた。しかし、その不可能を可能にしたのが、開発本部の「1.76開発チーム」だ。

チーム立ち上げから商品化までの約2年、どのようにして世界最高屈折率1.76レンズは生み出されたのか。開発の裏にはどのような苦労があったのか。素材開発の中核として関わったリーダーの長尾、岡本の2人の話を通して、これまで知られなかった開発の軌跡を紹介したい。

レンズの「命」である素材の開発
先の見えない模索が1年以上続いた

屈折率1.76のレンズ開発において、最も困難を極めたのがプラスチック素材の開発だった。従来の屈折率をわずか0.02縮めるために、材料の合成から配合の割合まで、すべてを新しく変えなければならない。長尾、岡本を含む素材開発メンバーにとって、1.76の素材開発はまさに未知の領域…。「自分たちの手で、世界一を生み出したい」という思いを会社が応援してくれたのは嬉しかったが、その分のしかかる重圧も大きかった。

開発チームの立ち上げ以降、毎日のように話し合いを重ね、日が暮れるまで素材づくりに没頭した。数種類の基本材料の分量を微妙に調整しながら合成し、さらに添加剤を加えていく。そうして液体原料ができるとすぐさま電気炉で固め、期待と不安を抱えて光学検査に臨んだ。しかし、何度試作を繰り返しても、結果はすべて惨敗。500回、600回と試行錯誤を重ねるうちに、1年以上の月日が過ぎていた。

「1.76なんて、もう無理ですよ…」

徹夜での研究が続き、メンバーは心身ともに限界に達していた。それでもリーダーの長尾は、部下への声かけを絶やさなかった。

「あと少し。今が正念場だから、がんばろう」

投げ出しそうになるたびに互いに励まし合い、目の前の作業に黙々と打ち込んだ。

開発成功後もつづく困難の数々…
生産現場と二人三脚で量産化をめざす

「よっしゃ!クリアしたぞ!」

深夜の実験室に歓声が沸き上がった。700回を超える試作の末、ようやく屈折率1.76の素材開発に成功したのだ。

しかし、メンバーに気を休められる余裕はなかった。発売期限まであと数ヶ月。出来上がったレンズを安全に量産できるように、工場での生産体制を整えなければならない。長尾が中心となって生産技術や生産部門のリーダーと調整をはかり、メンバー総出で機械の稼働状況の確認や各工程スタッフへの作業指示に尽力した。

「指示書通りに原料を合成しても、うまくいかないんですけど…」

「リーダー、試作レンズにひずみが生じています!」

生産準備もすべて手探りの状態でスタートしたため、予期せぬトラブルが立て続けに起こった。携帯電話の着信が鳴るたびに現場へ駆けつけ、問題の原因を1つずつ追究していく。改善作業を繰り返すうちに、発売期限は1ヵ月に迫っていた。

「何とか間に合わせて、お客様にお届けしたい!」

開発メンバーの強い思いは生産現場のスタッフの心を動かし、いつしか全員がひとつになって発売に向け汗を流していた。1日1日、緊張感を感じながらの地道な調整作業の末、ついに屈折率1.76レンズをスムーズに生産できる体制が整った。

ついに実現した1.76レンズの発売
業界は驚きと喜びに湧いた

『世界最高屈折率レンズ、ベルーナZX-AS発売!』

2006年4月、東海光学はそれまでの記録を塗り替え、世界最高屈折率1.76レンズを全国にむけて発売した。そのニュースは業界に大きな衝撃を与え、 “東海光学”の名を世界中に広めるきっかけとなった。

2年に渡るプレッシャーに打ち勝ち、偉業を成し遂げた開発メンバーたちは、社内でも大々的に表彰を受けた。社長はもちろん、生産に携わった技術者や、これから新商品として眼鏡店様へ提案していく営業社員たちからも祝福の言葉が投げかけられた。拍手のなかで表彰状を受け取る開発メンバーたちの表情は、誇らしげというよりは安堵感でいっぱいだった。

「世界一のために頑張ってきたわけじゃない。お客様に喜んでいただけるレンズを作るのが、僕たちの役目ですから」そう淡々と話す開発者たちの言葉からは、プロフェッショナルとしての揺るぎない姿勢、そして眼鏡を待ち望むお客様への真摯な思いが感じられた。

お客様の幸せを願う気持ちが、
新たなレンズを生み出す支えになる

商品化から15年以上が経った現在、東海光学が開発した世界最高屈折率1.76レンズ「ベルーナZX MU」、「ベルーナZX-AS」は眼鏡店様にとってなくてはならない商品となり、国内外のお客様の視生活を支えている。

従来のプラスチックレンズよりはるかに薄いため、とりわけ度数が強くてレンズの厚みが気になるお客様に喜ばれている。さらに薄さと軽さの両立に加えて、レンズの隅々までクリアに見え、ゆがみが少ないという見え心地の良さも高い評価を受けている。

屈折率1.76素材はレンズづくりに欠かせない3要素(屈折率、比重、アッベ数)の一つであるため、その驚きの薄さと快適さは、眼の健康を考えたアイケアレンズ「ルティーナ」や、脳科学を採用した「遠近両用レンズ」、「中近両用レンズ」などの最新設計商品にも展開されている。コーティングなどの二次加工にも対応しているため、その可能性とバリエーションは無限大と言ってもいい。

レンズを通してお客様の暮らしをより幸せで豊かにするため、開発チームの挑戦はこれからも続いていく。