History

4

80周年社史『新たなる挑戦』

コーポレートシンボルの策定

平成2年の「1万坪の夢の新工場」の完成と同時に、新たな飛躍を示す指針としてコーポレートシンボルを一新。青い円の右上に、丸い縁に沿って「i」の文字を描いたデザインである。「i」は眼と愛を意味し、顧客第一主義を実現するためのお客様への「愛」であり、愛社精神の「愛」である。青い円は「レンズ」であり、輝いている。また地球も意味しており、「i」は日本列島も表している。そしてグローバルに躍進していくことをグラデーションで描いているのである。同時に、長期ビジョンとして3本の柱「長年培ってきた独自のオプティカル技術を駆使し、さらに高品位の商品を開発すること」「眼鏡事業という柱に加え、独自の技術を生かし、新しい柱を構築すること」「マーケットを日本だけでなく世界へと広げ、グローバルな販売展開を実施すること」という意思を打ち出した。

i事業部

会社のパワーになるような新しいものを思い切ってやってみよう。そんな意思が脈々と流れる東海光学において、第二次中期計画の時に発足したのが「i事業部」である。取り組んだのは、ダイビング用度付きレンズなどスポーツレンズで「アイコット」というブランドを取り扱う「アイコット部」。そして、次に事業化したのがマルチコーティングを受託する「iCS部」である。東海光学の真空蒸着技術を生かした新しい製品を、ということで日名工場にマルチコーティングの機械を2台導入。このレンズは商社などを通じて国内外の販売網へ広がった。さらに医療の視点から新たな分野を確立できないかと「医療眼鏡部」も立ち上げた。

新事業という意味では以前から始めていた「フレーム事業」がある。昭和63年には東海光学オリジナルブランドフレームとして「シャロル・レゾン」が発売。アジア最大級の眼鏡総合展である「国際眼鏡展IOFT展’88」に初出展し、「ベルーナ」と「シャロル・レゾン」を大々的に発表した。

開発力と技術の逸材

新社屋設立にあたり、新たな挑戦のひとつとなったのが本社での「重合(キャスティング)」である。これまではサンルックスで行っていたが、屈折率の高い素材の独自開発を目的に、新社屋での開発に移行することとなった。当時最高の屈折率が競合他社の「1.6」。それを超える製品を作るために研究開発チームは1年がかりで開発を行った末、平成3年に東海光学オリジナル高屈折プラスチックレンズ第1号「SP(スーパー)1.6」が誕生した。これによって「素材開発から生産、販売まで全てを自社で行う、国内唯一のレンズ専業メーカー」として真の一貫生産体制が完成したのである。

研究開発部には優秀な人材が所属し、研究開発こそがお客様との接点を維持する生命線である。開発の3本柱は、素材の開発(屈折率の高いレンズの開発)、表面処理技術の開発(マルチコーティング、ハードコーティング、染色などの二次加工の開発)、設計の開発(非球面設計・累進設計の開発)。特に、スペシャリストの育成には惜しまず投資した。特筆すべきは、オリジナル累進レンズの開発と光学薄膜の道を開いた技術者の存在である。彼らの研究に向かう姿勢が、東海光学の技術力を飛躍的に革新させたのである。

非球面レンズと累進レンズ

難しいことへの挑戦を厭わない。それが東海光学が誇る累進レンズ開発者の底力である。非球面レンズの勉強を始めたのが平成2年、鴨田工場の加工部門と共に開発に挑み続け、非球面加工機械導入4ヶ月後の平成4年4月には、ついに東海光学初のSP1.6非球面レンズ(ベルーナHI-AS MC<マルチ>99)が完成した。その非球面レンズの開発が糧となり、さらに難易度の高い累進レンズの設計を開始。累進レンズの設計者は世界をみても指折り数えるほどしか居らず、その開発の道程は果てしないもののように思えた。苦節3年、平成7年に「近用ワイドビジョン コスモライフ(ベルーナUNOは翌年)」を発売した。近々用累進レンズで日本での特許を出願後、アメリカとヨーロッパにも出願し承認された。平成10年には、累進帯15ミリ、屈折率1.6の新型累進レンズ「ベルーナクレス」を発売。こうして東海光学の技術者が世界屈指の累進レンズ設計者のひとりとなったのである。

光学薄膜の幕開け

東海光学の新たな道の礎を築いたのが光学薄膜の技術者である。平成5年頃、非球面レンズの「マルチ99」は歩留まりが悪く、生産技術の見直しを迫られていた。そんななか薄膜技術を基礎から勉強し直し、眼鏡レンズ以外にも応用的な研究をしていくことを技術的課題として、託された若い技術者がいた。彼を薄膜研究の権威である大学教授のもとへ研究生として派遣したところ、研修先で光学薄膜と出会うのである。

薄膜技術の研究に集中できるように拠点を日名工場へ移し、暫くしてはじめて光学薄膜の受注が入る。光通信に使用する光ファイバーで、先端にレーザー光線がうまく飛ぶように反射膜を蒸着するという依頼であった。そして平成8年、「薄膜部」を設立。部員3名、初年度の売上はわずかだった。

東海光学の蒸着技術はガラスレンズのコーティングからの長い実績がある。これに対して光学薄膜は、ガラスや樹脂部分など、物体の表面に薄い膜を真空蒸着することで光の透過率をあげたり、反射率を高めたりする技術である。光の反射防止、赤外線の除去、光波長などをコントロールする機能をもち、応用範囲は眼鏡以外にカメラ、テレビ、パソコン、携帯電話、カーナビなど実に広い。ただし、技術的には非常に難易度が高い。眼鏡レンズの場合は、蒸着する層が3〜5層に比べ、光学フィルターの場合は40層ほどと多く、ナノオーダーの薄膜技術が求められるのである。その技術に定評を得て、薄膜部設立2年後には「薄膜事業部」に昇格した。

「よし、薄膜工場をつくろう」。21世紀、東海光学の第二の事業に成長の思いを込めて。平成13年、薄膜工場が竣工した。